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上司からの「お前」という呼び方はパワハラに当たるのか否か

現在、上司と呼ばれる立場にいる30代以上の人にとって、部下の呼び方には気を使うものです。

何故なら、自分が入社した当時は、上司から「お前」と呼ばれても、それが自然であり、そして当たり前だった時代だったにも関わらず、現在は下手をするとそれが”パワハラ”つまりパワーハラスメント行為だと言われてしまう可能性があるからです。

果たして、部下をなんと呼ぶのが正しいのか――そしてもしあなたが部下だった場合、何処からをパワハラだと考えればいいのでしょうか。

上司が部下を「お前」呼び この呼び方はパワハラになるもの?

職場で行われるパワーハラスメントは、現在、以下の6種類に分類されています。

  • ミスをした部下を殴った(身体的攻撃)
  • 人格の否定、暴言、侮辱の言葉を投げかけた(精神的攻撃)
  • 部下を無視したり、周囲にも無視するように仕向けた(人間関係の阻害)
  • 休日なのに呼び出して引っ越しの手伝いを強要した(過大な要求)
  • 毎日シュレッダーだけをさせる(過小な要求)
  • プライベートに関しても管理したがる(個の侵害)

今回の問題である上司が部下を「お前」と呼ぶことについては、この中の2番目、精神的攻撃に当たる可能性があります。

何故なら「お前」という呼称は、一般的に上の立場の人間が、下の立場の人間に対して優位性を示す時に使う呼称であるためです。

お前と上司に呼ばれた部下が、「自分にはちゃんとした名前があるのに、ただの上司にお前と呼ばれて侮辱された」と感じれば、まずパワハラの定義の一つ――”心身に苦痛を与える行為”だと見なされる可能性があるのです。

上司の部下に対する「お前」という呼び方がパワハラになる理由

そもそもパワーハラスメント、通称”パワハラ”は、ごく最近認知されるようになった言葉です。

その定義を平たく言うならば『同じ職場内での立場や人間関係など、優位に立っている人物が、”業務の適正な範囲を越えて”、”相手の心身に苦痛を与える行為”』です。

こう聞くと「え?上司→部下、先輩→後輩で行われるものではないの?」と思う人もいるでしょうが、そこも大切なポイントです。

例えば、「地位的には部下でも、資格の有無から優位に立っている人間が、上司に対して嫌がらせを行う」といったことも、実はパワハラに当たるんですね。

ただやはり、パワハラの加害者は、やはり上司に当たる立場の人間で、被害者はその部下、というケースが大半を占めるのが現状と言えます。

が、現在、上司と呼ばれる立場の人にとって、何故部下を「お前」と呼んだだけでパワハラと言われるのかが分からない、と考える人の方が多いのではないでしょうか?

しかし逆に、若い世代の部下の立場の人からしてみれば、何故、上司から「お前」と呼ばれなければならないのか、何故「お前」と呼ぶ選択肢があるのか、まずそこが理解できないのです。

「お前」の呼び方がNGなら、上司は部下をどう呼べばいいのか

では、上司の立場の人が理解しておかなければならないことについて触れましょう。

自分達は、上司に「お前」という呼び方をされても、それを不快に思うことはありませんでした。

それは上司には何が合っても従うものだという価値観の中で育ってきたからです。

そして何より、この呼び方は単なる呼び方の一つ、という考え方が一般的でした。

しかし現在は、この「お前」という呼び方は、”蔑称”だとする考え方が一般的になってきているのです。

この呼び方が許されるのは、よほど気心の知れた人だけ、という価値観を持っている人の方が多くなっているのです。

(中には、親しい間柄でもこの呼び方をされると不快だと思う人もいるほどです)。

ですから、そうでない人間――職場のみの関係である筈の上司にそう呼ばれることが不快になるのです。

職場は職場、プライベートはプライベート、そうしたはっきりしたラインを持っていて、ここを踏み越えられると途端に不快だと感じます。

そのため、個としての名前があるのに、お前という”蔑称”で呼ばれることが不愉快だ、そう感じる人がいる。

そのことを念頭に置き、そもそも使わず、かつ男女に関わらず、呼び方を「○○さん」「○○君」と統一しましょう。

部下の立場の人が「お前」と上司に呼ばれた時にすべきこと

では、部下の立場の人が理解しておくべきことを見てみましょう。

上司があなたを「お前」と呼ぶ時には、別に(叱責を受けているような場でないならば特に)貶めようとしているからではありません。

むしろ、自分にとって信頼のおける部下だからつい「お前」と呼んでしまった、というケースがあることを念頭に起きましょう。

上司のその言葉一つに噛み付くのではなく、侮辱の呼び方かそうでないかは、前後の文脈から察する力を持つべきです。

「お前は本当に気が利くし、この仕事を任せて安心だ!」

「お前は本当に使えないやつだな!」

…と、同じ「お前」という呼び方でも、内容を見れば、それが蔑称かそうでないかは分かることです。

それを理解した上で、「すみません、お前と呼ばれるのはちょっと気分が良くないので変えて欲しいのですが」と、まず自分が不快だと感じていることを上手に伝えるべきです。

「今、あなたは私のことをお前と呼びましたね!パワハラですよ!」という伝え方では、お互いにとっていいことは何もありません。

上司と部下、お互い理解しあうことが良い職場を作る最善策

パワハラという言葉が世間に知られ、その対策が取られ始めている昨今ですが、上司と部下、どちらの立場の人も、一度真剣にパワハラについて考えるべきでしょう。

上司の立場の人からすると「今の若者は軟弱だ。昔はもっと〜」という気持ちを持っているかもしれませんが、少なくとも、現在の世間一般の価値観からすれば、上司に上から押さえつけられて働くことは間違いです。

自分ばかりが損をしている気分になるかもしれませんが、逆に考えれば、自分は恨まれる立場にならなくて済むのです。

そして部下の立場の人も、自分が少し不快に思ったからと、何でもパワハラだ!と断じるような態度は早計だと言えます。

勿論、嫌な思いをしていることをパワハラと訴えることが間違いだと言っているわけではありません。

ですが、例えば元々の原因が自分にあるのに、叱られたことだけを取り上げてパワハラ扱いする前に、自分の行いを反省する必要がある――そうしたケースもあることを、しっかり理解しましょう。

会社は、幅広い世代の人間が集まる場です。

言い換えるなら、それぞれ違った価値観の中で育った人間が、何の苦労もなく手を取り合って明るく楽しく働ける、そんなことは幻想でしかありません。

お互いに歩み寄り、理解しあわなければ、本当に働きやすい職場にならないことを、どちらの立場の人も知っておきましょう。

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